講座「スタインウェイピアノの調律」~ホロヴィッツ・ピアノの秘密~

会場のタカギクラヴィア「松濤サロン」に並んだ3台のスタインウェイピアノ(朝日カルチャーセンター新宿の講座でした)。中央と手前がホロヴィッツが愛したピアノで、中央が伝説の1912年製CD75で、手前が1887年製ローズウッドのCD503です。奥のは、同社に来る前、最近のことのようでしたが、最後に使われたのが演歌歌手氷川きよしさんのレコ―ディングだったことから、講師のピアノ技術師高木裕さんとピアニスト干野宣大さんが「きよし」と呼んでいました。

ホロヴィッツとピアノに焦点を絞った講座でした。
75と503にはメイプルが使われ、何人もの職人の気持ちが籠もっていて、微妙な音(色)が出せ、ホールで傍鳴り、遠鳴りもするが、現代製の「きよし」は楓が使われ、2台のように、昔、作られたものと比べたら、個性がなく、“キーボード”だと酷評されていました。
ステージ上のキャスターの向きで音色が変わると、よく言われますが、高木さん曰く、「あり得ない!」と言い切っていました。ただ、レコーディングの時は、観客がいないので、最良の音が出るよう、ステージの端ギリギリにまで置くことがあるそうです。

75の軌跡です。

CDのCはコンサート、Dはフルコンを表すとのこと。
ホロヴィッツの1983年のNHKホールでの評判の良くなかった演奏に触れ、強ち、ホールの所為という訳でもなかったのでしょうが、同ホール(の音響)は「スカスカ、音が痩せる」と高木さんは仰り、その3ヶ月後にサントリーホールがオープンしたので、「(公演日程が)ズレていたら、間違いなく、ホロヴィッツは、そのこけら落としで演奏していたでしょう」とも仰っていました。

干野さんがショパンのマズルカ(作品No.が分かりませんでした)を3台で弾き分けましたが、やはり、75には深み、奥行きが感じられました。さらに、75で、ホロヴィッツがよく弾いたという、スカルラッティ(曲名分からず)とリストの「コンソレーション3番」を弾きましたけれど、胸に染み入ってくる演奏でした。

503の響板への特許の書き込みサインです。職人さんたちの心意気が表れています。

スタインウェイの現在の会社は、アメリカのファンドだそうですが、近々、中国のファンドに変わるでしょうとのこと、時代の趨勢とはいえ、いやはや、という感じです。

開場前、3番目までに並んだ人への“プレゼント”として、お隣りにあるタカギクラヴィア経営の「カフェ タカギクラヴィア」のドリンクサービス券を、3番目でいただいたので、終了後に一服。

店内のピアノ、スタインウェイ1911年製B型ルイ16世モデル。

どんな音色か、弾いてみたいものです。