吉野弘さんの詩「二月の小舟」
今朝の朝日新聞「天声人語」欄で、「夕焼け」「祝婚歌」など、平明な言葉で温かみのある詩を書かれた吉野さんのこの詩が引用されていました。
二月の小舟
冬を運び出すにしては
小さすぎる舟です。
春を運びこむにしても
小さすぎる舟です。
ですから、時間が掛かるでしょう
冬が春になるまでは。
川の胸乳(むなぢ)がふくらむまでは
まだまだ、時間がかかるでしょう。
明後日はもう立春ということでの引用ですが、冬でも、春でもなく、うつろうこの時季を、吉野さんの感性は川に浮かぶ小舟に譬えます。
読み方は自由ですので、季節の微妙な変化を詠った詩と読んでもいいでしょうが、「川の胸乳がふくらむまでは」がこの詩の琴線で、例え、「時間がかかって」も、生きるうえでの春、即ち、“光り”を待ち望む歌だと思いました。
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