映画「筆子 その愛~天使のピアノ~」
社会変革のために活動した人や時代に翻弄された人を取り上げ、世に問う作品を作り続ける御年91歳の映画監督山田火砂子さんの3作品の一挙上映会のうちの標記映画を観てきました。
他の2作品は「母 小林多喜二の母物語」と「大地の詩・留岡幸助物語」でした。
会場は東村山市市民ステーション「サンパルネ」。主催は「現代プロダクション」。
山田監督のお顔は存じ上げなかったのですが、受付設営時に徐ろに現われた白髪の方のオーラに直ぐ分かりました。
石井筆子は日本の近代女子教育者で、明治期、社会福祉という言葉すらない時代に、夫の亮一と共に、キリスト教(聖公会――カソリックとプロテスタントの中間)の精神に基づき、知的障害児に温かな目差しを向け、日本初の知的障害者教育を創め、障害児教育の母と呼ばれました。
その施設は、現在、国立市にある「滝乃川学園」です。
2006年の作品で、出演は常磐貴子、市川笑也、加藤剛、市原悦子(ナレーション)などです。
平成19年度の厚生労働省 児童福祉文化賞を受賞しています。
筆子は津田梅子らと共に海外留学を経験、女学校で教鞭をとりつつ、社交界では「鹿鳴館の華」と呼ばれ、結婚。生まれた長女が知的障害を持ち、次女が生後10ヶ月で亡くなり、三女は結核性脳膜炎、続いて夫も結核で亡くなるなど苦難に襲われました。
そのような中、濃尾大地震で親を失った少女たちを救うため、「孤女学院」を運営していた石井亮一(市川笑也)と出会い、支援活動を続けるうちにその活動と人間性に深く感銘を受けました。亮一は筆子の父親(加藤剛)に結婚の承諾を得ようとしましたが断られ、筆子の女中サト(当時無名塾の俳優渡辺梓)が見かねて、父親を刀を懐に決死の覚悟で訪れ、思い変わらぬ父親に自害の意思を示してまで迫り、父親は逆上して日本刀を振りかざすも「勝手にしろ」と言い、“承諾”を得ます。このシーン、渡辺梓が迫真の演技で、全体的にも脇を締めていて好感が持てました。
亮一が1937年に70歳で亡くなった後も、筆子は滝乃川学園の子どもたちのために尽くし、戦中の1944年、反戦の心を持ちながら、84歳で施設の小さな一室でひっそりと亡くなりました。
園生が聖歌344番を歌いながら送っている時、人の耳は死後も聞こえているということを証するように、「筆子は大粒の涙を流していた」とナレーションは語っていました。
いばら路と知りて捧し身にしあれば
いかで撓まん撓むべきかは
石井筆子
サブタイトル「天使のピアノ」からして、ピアノ(演奏)シーンが僅かでしたので、ピアノ好きとしては物足りませんでした。
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